日本人の金融リテラシーのルーツとは

「日本は江戸時代までは封建社会だったため、市場経済が発達したのは明治時代以降である」との議論を耳にすることがあります。
しかし平安時代から江戸時代にかけて、貨幣経済はわが国でも相応な規模を有し、金融取引も江戸時代までに既に広くさまざまな形で行われていたことを忘れてはいけないポイントとしてまず押さえておく必要があります。
「無尽」や「講」のような金融取引が、伊勢詣に代表される長旅や家の新築など、お金のかかるライフイベントの実現に役立てられてきたのです。
米の先物市場や「株仲間」なども、高度な市場インフラとして、江戸時代には既に機能していました。
「宵越しの銭は持たない」という言葉が江戸っ子気質を象徴する言葉として広く知られることや、大正時代から昭和初期にかけて株式投資が盛んだった事実に照らすと、お金に関する日本人の態度は多様で、なおかつ時代ごとにさまざまな変遷をたどっており、節度と節制を重んじる気風は、単純に「古来日本人に深く根差すものだった」と結論づけることはできないのです。
しかし、第二次大戦後、日本人の貯蓄率の高さは広く世界に知られ、1980年代には貿易摩擦の原因として国際的な批判の対象にもなりました。
その後、貯蓄奨励は影をひそめ、消費を美徳とする米国的な価値観が広まるようになった歴史があります。
こうした歴史的変遷を経た今、日本人の金融に対する行動を分析してみると、残念ながら、お金に関する知識や態度の面で極めて優秀とか賢明であるとは言いにくい状況にあります。
なぜでしょうか?
近年公表された金融リテラシーに関する調査によると、日本人の金融に対する意識は、知識の面では、インフレ、分散投資の定義やリスクとリターンの関係を理解している人の割合が少なく、態度の面でも商品を購入する際に十分余裕があるかを熟考する人の比率が他国と比べて決して高くない……という結果が出ているのです。
また、お金に関する事柄に常に注意していると回答した人の割合も他国に比べて低く、現代日本人の金融リテラシーの向上は、金融システム、高度にグローバル化した経済の複雑さという近年の状況を鑑みると、喫緊の課題であると感じさせる結果となっています。

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