ディーリングに求められる倫理
外貨売却や購入は誰でもすることができます。外国為替市場は誰もが参加できるマーケットなのです。価格は当事者の取り引きで決定されるため、誰もが平等に儲けられるチャンスが転がっていると言ってもいいかもしれません。
まれに、政府などが価格の操作を図ることもあるようですが、外国為替市場に参加している人たちは、国籍や年齢、性別に関係なく自分の利益だけを追求して行動しています。言い換えれば、外国為替市場は世界で最も資本主義の精神が貫かれている市場ということです。
しかし、資本主義的な構成が共通の倫理であるはずの外国為替市場でも、ルールを無視したディーリングをする人が存在するのも事実です。
たとえば、ある企業が金曜日の午後の米圏西海岸の市場で比較的大口のドル売り取引を行ったとしましょう。時間的に金曜日午後の米国西海岸は週最後の外国為替市場であり、土曜と日曜は取引がありません。そのため、多くの銀行は多少の損失がでるのは仕方ないと考え、ポジションをスクエアーにしようと試みます。もし、それが売りであれば、売りが増えることになるためドルのレートはおのずと下がります。そうして、企業はある程度、ドルが下がったところで別の銀行と反対取引をして、高く売ったドルを安く買い戻すのです。
市場の特殊性を悪用して自分の会社だけが儲かればよいという汚いディーリングをすることは、自由で公正な市場の発展を阻害するものであり、公正な競争が求められるディーラーの倫理にも著しく反するものだといえるでしょう。